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メーカーのための失敗しない価格調整依頼
多くのメーカーが抱えている自社製品の”価格下落問題”。
特にEC市場では昨今価格変動が激化し、著しく価格が下落するケースが多くなっています。販売ルートは、二次店や三次店を含めると数が膨大になり、自社製品販売価格を把握しにくいことから対策が遅れがちです。それにともなって各メーカーは、自社製品の値崩れによるブランド価値の低下や、販売店からの価格引き下げ交渉に悩まされるケースが増えています。
今回は、メーカーのブランド価値の毀損を防ぎ、販売店からの苦情などを減らすための参考情報として、いち早く製品価格下落の原因を把握し、速やかな価格調整を実施する方法をお伝えします。
価格下落が起こる原因の多くは、販売店同士での価格競争。特定の販売店が価格を引き下げると、他店がそれに追随。さらに他の多くのショップがそれに続いて価格を引き下げる連鎖が起こります。メーカが価格下落に対処するには、いち早く価格下落の原因となっているショップを把握し、価格調整依頼を実施する必要があります。価格下落の原因特定は以下の2点がポイントです。
1,2次、3次以降の流通先を特定する
直販や代理店以降の流通先が価格下落をリードするケースがあります。その販売店を把握し、販路を特定する必要があります。
2,販売店の価格追随関係を特定する
どの販売店がどの販売店に追随するか。価格下落の原因である販売店間の価格追随関係を把握することで、価格下落防止や解決の糸口となります。
また価格下落への対処のポイントは以下の2点です。
1,価格調整のお願いをすることは可能
たとえば大手家電量販店に対する価格調整依頼の場合、基本的には、同じタイミングで商品価格を一斉に上げてもらうように依頼する、「一斉調整」を実施します。また、価格調整は、公正取引委員会のガイドラインにおいて認められた行為です。価格調査を実施することで、事実をもとに価格調整依頼を行うことがでるようになります。
2,一斉調整は販社にとってもメリットになります
販社が最も恐れている事態は、「自店の販売価格だけが高く、他店に客が流れてしまうこと」です。しかし、一斉に価格を上げる一斉調整は、「他店に差をつけられずに粗利が増える」ため、販社にとってもメリットになります。
具体的な価格調整依頼の方法と手順の事例です。
1,価格調整依頼方法
販社に対して、
①事前に、一斉調整のときに対応してもらえるようにお願いしておく
②一斉調整の通知内容をメールやFAXで事前に共有する
2,交渉順
①交渉難易度が高い販社
交渉難易度が高い販社から、事前に一斉調整の条件を交渉します。
・調製条件(いつ、どの商品を、いくらで販売してもらうか)
・交渉可能SKU数
※業界内で売上高が高く、バイヤーの要求が激しい販社
②その他販社
①に該当する販社との交渉成功のエビデンスをもとに、その他販社と交渉。
また、価格調整依頼実施は公正取引委員会のガイドラインに抵触しないよう注意が必要です。調整依頼はあくまでも「お願い」というメーカー側の願望を伝えるに留める必要があります。たとえば、「◯月◯日までに商品Aの価格を◯◯円まであげるようにお願いできませんでしょうか?」という表現はOKです。
しかし、そのあとに「そうしないと(出荷停止・取引停止・卸値変更など)をせざるを得ません」などと、ペナルティを示唆することを伝えてしまうと、“再販売価格維持行為”となり、公正取引委員会のガイドラインに抵触してしまいます。
価格調整依頼を速やかにトラブルなく実施するために、社内に価格調整の実施・進捗を管理できる体制を作ることが重要です。
具体的には、以下の4点です。
1,自社製品の市場価格調査をシステム化する
ECの価格調査を人手で実施している場合、早急に価格調査システムを導入し、自動化する必要があります。多くの場合、調査先が多く人手による調査には限界があります。価格調査システムによる自動化で、ECの販売価格をスピーディーに確実に取得できるようになります。
2,社内の管理体制を構築する
上長などへの報告フローを策定し、速やかに手が打てる体制を構築する。
3,関係者へ一斉調整のアナウンス方法を共有する
一斉調整のフォーマットとアナウンスフローを策定し、速やかに一斉調整を依頼できる体制を作る
4,関係者へ一斉調整依頼事のNGワードを浸透させる
販売店へのペナルティを匂わせる言い回しにならない表現の徹底などの社内ルールを策定し浸透させる
社内体制の一例をお伝えします。
■体制決定
価格調査実施の、管理者・責任者・調整実行者を選定。
■役割
○管理者
・価格調査システムの調査条件等の設定
・共有用の帳票作成
○責任者(調整実施部門の部門長・マネージャー)
価格調整時に調整未実施販社の特定を受け、調整実行者(販社担当営業)に対し指示をする。価格調整後には社内会議等の打合せで販社担当営業に対してフィードバックを実施。
○調整実行者(販社担当営業)
販社バイヤーに対して、価格調整依頼を行う。
中でも特に重要なことは、EC市場での自社製品価格を、正確に早く把握することです。いつ・どこで・いくらで販売されているかを正確に早く知ることで、価格下落の原因を特定し、速やかな対策が可能になります。その結果、ブランド価値毀損を防止し、売上・粗利を最大化することができます。そのために、いち早く価格調査をシステム化することが重要と言えるでしょう。
次の記事では、どういった価格調査システムを導入すればよいかわからないという方のために、国内の価格調査システムを徹底比較しています。
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